満中陰志の挨拶状

最近ではEメールやSNSなど便利な通信手段が発達していることから、挨拶状を送る機会は減っています。しかし、弔事にまつわる場面では、挨拶状を送る機会が今も少なくありません。

では、満中陰志の挨拶状には、どのような内容を記載すれば良いのでしょうか?今回は、満中陰志の挨拶状の例文を紹介するとともに、挨拶状を作成する際のマナーや作成する際のポイントについてくわしく解説します。

満中陰志とは

満中陰志とは、四十九日の忌明け後に送る香典返しのことを指します。関西など西日本を中心に使用される言葉であるため、関東など他の地域の方にとっては聞き慣れないかもしれません。

また、満中陰志は神道やキリスト教などでは使用せず、仏教独特の表現です。

「満中陰志」の言葉を分解すると、まず「中陰」が、故人が亡くなってから49日間の期間を指します。いわゆる「忌中」にあたる期間のことです。

そして、中陰が「満」ちるとは、中陰の期間を終えたこと、すなわち忌明けを意味します。このときに送る返礼品(こころざし)であるため、「満中陰志」というわけです。

満中陰志の挨拶状はいつ送る?

満中陰志を送る際には、挨拶状を添えることがマナーとされています。

挨拶状を添えた満中陰志は、四十九日(中陰)が明けてから送りましょう。四十九日の忌明けを迎える前に満中陰志を送ることは、一般的ではありません。

四十九日後、いつまでに送るべきという明確な決まりはありませんが、四十九日の法要が済んだらできるだけすみやかに手配してください。遅くとも、四十九日法要後、おおむね1ヶ月以内には送るべきでしょう。

満中陰志の挨拶状の書き方

満中陰志の挨拶状の書き方と全体の流れは、次のとおりです。下で紹介をしている例文と照らし合わせながらご覧いただくと、よりイメージが湧きやすくなるでしょう。

頭語を記載する

満中陰志の挨拶状は、頭語から書き始めることが一般的です。同じ弔事の挨拶状でも、故人が亡くなったことを相手に伝える死亡通知では頭語は記載しないものとされていますが、弔事全般で頭語を書かないわけではありません。

頭語とは、文章のはじめに記載をする「拝啓」などの表現です。満中陰志の挨拶状を送る際の頭語には、「拝啓」か「謹啓」を使用することが多いでしょう。

このうち、「拝啓」は一般に広く知られています。中陰志の挨拶状でも、「拝啓」を使用して問題ありません。

一方、「謹啓」は、目上の人へ送る挨拶状や、よりかしこまった場面で送る挨拶状に適した表現です。より丁寧でかしこまった印象を与えたい場合には、「謹啓」を使用すると良いでしょう。

時候の挨拶は記載しない

時候の挨拶とは、季節のことばとともに相手の健康や幸せを願うフレーズです。

たとえば、「初秋の候 皆様ますます御清祥のこととお慶び申し上げます」「立春のみぎり 〇〇様におかれましてはますますご健勝のことと存じます」などの表現が、時候の挨拶にあたります。

一般的な挨拶状では、頭語に続けて時候の挨拶を記載し、その後で本題に入ることがマナーであるとされています。一方、満中陰志の挨拶状では、時候の挨拶を記載しないことが一般的です。

ただし、「御尊家御一同様にはますますご清祥のことと存じます」や「皆様にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます」など、季節について触れない挨拶を記載することは問題ありません。冒頭にこのような挨拶を添えることで、相手を気遣った柔らかい印象の挨拶状となります。

葬儀参列や香典へのお礼を記載する

満中陰志の挨拶状では、相手が葬儀へ参列してくれたことや香典などをいただいたことへのお礼を記載しましょう。

「亡父 〇〇 儀 永眠に際しましては御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます」や、「先般 亡父 〇〇 儀 葬儀に際しましては御懇篤なる御弔慰ならびに御芳志を賜り誠に有り難く厚く御礼申し上げます」などです。

なお、「御弔慰」とは、遺族を慰めることや亡くなった方を弔うことなどを指します。葬儀へ出向いてくれたことや、遺族へ慰めの言葉をかけてくれたことなどをもって「御弔慰」と表現することが多いといえます。

また、「御厚志」や「御芳志」とは本来親切な心遣いや深い想いやりなどを指す言葉ですが、満中陰志の挨拶状や四十九日の挨拶状で使用する際には、香典や供物、供花などをいただいたことを意味することが一般的です。

四十九日法要が無事に済んだことを記載する

満中陰志の挨拶状には、四十九日の法要が無事に済み、満中陰を迎えたことを記載しましょう。

たとえば、「このたび満中陰の法要を滞りなく相済ませました」や、「〇月〇日に四十九日の法要を相営みました」などです。

四十九日法要と満中陰の法要は同じものをさしますので、いずれで記載をしても構いません。また、「七七日法要」と記載することもありますが、これも同じ法要を指します。

仏教では亡くなってから7日ごとに故人の魂が審判を受けるとされており、その7回目にあたる日が、亡くなってから49日目にあたるためです。なお、「七七日」は「しちしちにち」や「なななぬか」、「なななのか」などと読みます。

また、法要を営んだ日は具体的な日付を記載しても構いませんし、「本日」や「このたび」などと記載しても構いません。

品物を送った場合にはその旨を記載する

満中陰志のお礼状に香典返しの品物を同封した場合には、その旨を記載しましょう。

たとえば、「供養のしるしとして心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒御受納いただきますようお願い申し上げます」や、「満中陰の御印までに心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます」などです。

なお、神道やキリスト教では香典返しにあたるものを「偲び草」といいますが、仏教でこの表現をすることは一般的ではありません。

書中での挨拶を詫びる文言を記載する

文章の最後に、書中での挨拶を詫びる文言を記載しましょう。

たとえば、「早速拝眉の上御礼申し上げるべきところではございますが 略儀ながら書中にて御礼かたがた御挨拶申し上げます」などです。

最近では、郵送で満中陰志と挨拶状を届けるケースが多くなっています。しかし、香典返しは本来、相手のもとへ出向いてお礼を述べるものでした。そのため、このような書中での挨拶を詫びる一文を記載することがマナーとされています。

なお、挨拶状でよく使用される「拝眉(はいび)」や「拝趨(はいすう)」とは、いずれも相手のもとへ出向いて相手と会うことをへりくだって伝える表現です。

結語を記載する

本文の最後には、結語を記載しましょう。結語とは、「敬具」など、文章を締める表現です。使用することができる頭語は、その挨拶状で使用した頭語によって決まります。

たとえば、頭語に「拝啓」を使用した場合に使用できる結語は、「敬具」などです。また、頭語が「謹啓」であれば、結語は「謹白」や「謹言」などとなります。

日付と差出人名を記載する

本文の後に、日付と差出人名を記載します。

日付は日にちまで書いても構いませんし、「令和4年10月」など年月のみの記載でも構いません。

差出人名は、喪主とすることが一般的です。また、喪主名に「親族一同」などと併記する場合もあります。

満中陰志の挨拶状の例文

満中陰志に添える挨拶状の例文は、次のとおりです。ここでは、戒名を記載しない場合と戒名を記載する場合とに分けて紹介します。

戒名なしの場合

戒名を記載しない場合における満中陰志に添える挨拶状の例文は、次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様にはますますご清祥のことと存じます
先般 亡父 挨拶太郎 儀 永眠に際しましては御多用中にもかかわらず御懇篤なる御弔慰ならびに御厚志を賜り 誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび満中陰の法要を滞りなく相済ませました
つきましては 供養のしるしとして心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒御受納いただきますようお願い申し上げます
早速拝趨の上御礼申し上げるのが本意ではございますが 略儀ながら本状をもちまして御挨拶申し上げます  謹白

令和4年9月
                   挨拶一郎

戒名ありの場合

戒名を記載する場合における満中陰志に添える挨拶状の例文は、次のとおりです。

謹啓 皆様にはますますご清祥のこととお喜び申し上げます
先般 亡父 挨拶太郎 儀 葬儀に際しましては御懇篤なる御弔慰ならびに御芳志を賜り
誠に有り難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび
( 戒名 )
満中陰の法要を相営みました
つきましては 満中陰の御印までに心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝眉の上御礼申し上げるべきところではございますが 略儀ながら書中にて御礼かたがた御挨拶申し上げます  謹白

令和4年9月
                   挨拶一郎

戒名がある場合と大きく内容や言い回しが異なるわけではなく、誰の法要であるのかを記載する際に戒名を記す点のみが異なります。

満中陰志の挨拶状の基本マナー

挨拶状には、さまざまなマナーが存在します。

最近ではマナーをさほど意識しない挨拶状も増えています。しかし、満中陰志の挨拶状など弔事にまつわる挨拶状では引き続きマナーが重視される傾向にあるため、基本に添って作成した方が良いです。

満中陰志の挨拶状で特に注意すべきマナーは、次のとおりです。

適切な時期に送付する

満中陰志の挨拶状は、四十九日法要を終えたらできるだけすみやかに送るのがマナーであるとされています。遅くなってしまうと失礼にあたる可能性がある他、何かあったのではないかと相手を心配させてしまう可能性もあります。

四十九日の後、遅くとも1ヶ月以内くらいには送ることができるよう、挨拶状や満中陰志をあらかじめ準備しておくと良いでしょう。

縦書きで作成する

挨拶状は、縦書きで作成することが基本のマナーとされています。

しかし、最近では横書きの文章を見慣れている人が増えているためか、横書きされた挨拶状を見かける機会も増えてきました。役所が出す文書なども最近では横書きが主流となっているため、通常の挨拶状であれば、横書きで作成したからといって失礼にあたることはないといえます。

そうであるとはいえ、満中陰志の挨拶状など弔事の挨拶状においては、横書きで作成するケースは今もほとんどありません。

横書きで作成してしまうと、相手に違和感を与えてしまう可能性があります。そのため、満中陰志の挨拶状など弔事で送る挨拶状は、基本どおり縦書きで作成した方が良いです。

誤字脱字に注意する

挨拶状を作成する際には、誤字脱字に注意しましょう。

中でも、相手の氏名を誤ることは、大変な失礼にあたります。氏名によっては似た漢字がいくつか存在する場合がありますので、あらかじめよく確認したうえで作成してください。

また、住所を誤れば、せっかく送った挨拶状や満中陰志が相手へ届かない可能性があります。

特に、最近引越しをした相手などは、古い住所宛に送ってしまわないように注意してください。

誤字脱字は、挨拶状の本文でも避けるべきです。仮に作成した後で誤字や脱字を見つけてしまった場合には、手間であっても、新たな用紙で作成し直してください。誤字脱字を二重線や修正テープなどで訂正した状態で挨拶状を送ることはマナー違反です。

挨拶状を印刷で作成する場合には、変換ミスなどで特に誤字脱字が起きやすいため、慎重に確認することをおすすめします。

句読点を使用しない

挨拶状では、句読点を使用しないことがマナーであるとされています。

最近では読みやすさを重視して、句読点を使った挨拶状も増えてきました。しかし、先ほども解説したように、弔事では引き続きマナーや伝統が重んじられる傾向にあります。

そのため、満中陰志の挨拶状など弔事で送る挨拶状では、句読点は使用しない方が良いです。なお、挨拶状で句読点を使用しない理由には諸説ありますが、主にいわれている理由は次のとおりです。

  • 句読点は文章を区切る役割を持つことから、相手との関係を切ることを連想させてしまい、縁起が悪いため
  • 句読点の歴史は挨拶状の歴史よりも浅く、挨拶状では句読点を使わないことが伝統的であるため
  • 句読点はそのままでは文章が読みにくい子どものために使われ始めたものであり、挨拶状で句読点を使えば、相手を文章の読めない子ども扱いしていることになるため

忌み言葉を避ける

忌み言葉とは、縁起が悪く、そのシーンでは避けるべきとされている言葉のことです。満中陰志の挨拶状など弔事の場面では、次のものが忌み言葉にあたるとされています。

  • 不幸が繰り返されることを連想させる言葉:「引き続き」「重ねて」「続けて」「追って」「再び」など
  • 同じ表現を繰り返す言葉(不幸が繰り返されることを連想させるため):「次々」「重ね重ね」「重々」「たびたび」「返す返す」「またまた」「くれぐれも」など
  • 生死を直接表現する言葉:「死ぬ」「死んだ」「急死」「生きる」「生きていたころ」など
  • 不吉な言葉:「落ちる」「終わる」「消える」「苦しむ」など

また、「四」や「九」も、できれば避けるべき表現とされています。「四」は「シ」と読むため「死」を連想させ、「九」は「ク」と読むため「苦」を連想させるためです。ただし、日付や「四十九日」の表現として使用する分には問題ありません。

他にも、仏教においては「浮かばれない」や「迷う」といった表現も忌み言葉にあたります。

これらの言葉は、故人が成仏できないことをイメージさせてしまうためです。これらの忌み言葉はできる限り避け、他の表現に言い換えた方が良いです。

まとめ

挨拶状には、注意すべきさまざまなマナーが存在します。中でも、満中陰志の挨拶状など弔事に関する挨拶状では特にマナーが重んじられる傾向にあるため、マナー違反とならないよう注意してください。

しかし、四十九日法要の前後は他に行うべきことも多く、満中陰志の挨拶状の文面をじっくりと練る時間が取れないという方も少なくないのでいでしょう。そのような場合には、テンプレートをもとにして挨拶状を作成することがおすすめです。

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