家族葬の挨拶状

最近では、家族葬で小さく葬儀を行うケースが増えています。家族葬に厳密な定義はありませんが、一般的には、家族などごく親しい人のみで執り行う葬儀を指すことが多いでしょう。

では、家族葬で葬儀を営んだ場合、故人と親交のあった方や親族などへ挨拶状を送る必要はあるのでしょうか?今回は、家族葬で葬儀を行った場合に送る挨拶状について、送る時期や注意すべきマナーなどをくわしく解説します。宗教別の例文も掲載しておりますので、ぜひ挨拶状を送る際の参考としてください。

家族葬の挨拶状とは

葬儀を家族葬で行うケースが増えています。家族葬とは、家族などごく親しい人のみで行う葬儀を指すことが一般的です。

一般的な葬儀を行えば、家族が対応に追われてしまい、故人との最後の時間をゆっくり過ごせない場合が少なくありません。家族葬とすることで、家族など故人と近しい間柄の人のみでゆっくりお別れの時間を持ちやすくなるでしょう。

家族葬を行う場合には、葬儀の前には亡くなったことや葬儀の日時を、ごく限られた人にしか伝えないことが一般的です。あらかじめ広く訃報を伝えてしまうと、たとえ家族葬で行う旨を知らせていても参列者が訪れる可能性があり、家族葬とは呼べない規模になってしまったり家族が対応に追われてしまったりしかねないためです。

そのため、家族葬にて葬儀を行った場合には、葬儀などの法要が済んでから、故人と生前に親交のあった人に対して、亡くなったことや葬儀が済んだことを知らせる挨拶状を送ることとなります。これの通知のことを、家族葬の挨拶状といいます。

家族葬の挨拶状はいつ送る?

家族葬の挨拶状を送る時期に、明確な決まりがあるわけではありません。ただし、あまり遅いと、故人が亡くなったことを故人と親交のあった人がいつまでも知らないままとなり、不都合が生じる可能性があります。

そのため、一般的には、忌明けの法要(仏式では、四十九日法要)が済んだあたりで送ることが多いです。忌明けの時期は宗教によって異なり、それぞれ次のとおりです。

仏式の場合

仏式の場合には、四十九日法要をもって忌明けとなります。なお、仏式の場合には7日ごとに故人の命日が来ると考えられており、その7回目にあたるのが四十九日法要です。

そのため、四十九日法要のことを「七七日(「しちしちにち」「なななのか」「なななぬか」など)」と呼ぶこともあります。家族葬を行った場合には、四十九日法要が済んだあたりで挨拶状を送ることが多いです。

神式の場合

神式の場合には、「五十日祭」をもって忌明けとなります。この五十日祭が済んだ後で、家族葬の挨拶状を送ることが一般的です。

キリスト教式の場合

キリスト教のうちカトリックでは、死後30日目に「追悼ミサ」を執り行います。また、プロテスタントでは、死後1ヶ月後に「昇天記念日」として集会が開かれます。家族葬の挨拶状は、こちらが済んでから送ることが一般的です。

家族葬の挨拶状は誰に送る?

家族葬の挨拶状を送る相手に、厳密な決まりがあるわけではありません。一般的には、本来であれば故人の葬儀に来てくれるはずだった方々へ送付することが多いです。たとえば、故人と生前親交のあった友人や知人、職場関係の相手などです。

ただし、最近では故人と喪主が同居していないケースも多く、故人の交友関係がよくわからないという場合も少なくありません。その場合には、故人宛に年賀状や暑中見舞いなどが届いている相手に知らせることも1つです。

家族葬の挨拶状を送って失礼にあたることはありませんので、故人宛に届いた年賀状の送り手と故人がどのような関係性か分からず送るべきかどうかに迷った場合には、送っておいた方が良いでしょう。

家族葬の挨拶状を書く際のポイント

家族葬の挨拶状を書く際のポイントと挨拶状の全体像は、次のとおりです。後ほど紹介する文例と照らし合わせながらご覧いただくと、よりイメージが湧きやすくなるでしょう。

亡くなった日と亡くなったことを伝える

家族葬の挨拶状では、まず、故人が亡くなったことと、亡くなった日にちを記載しましょう。「父 挨拶太郎 儀 十月一日に永眠いたしました」などです。

故人については、「父 挨拶太郎」「父 太郎」のように、送り主である喪主との関係性と氏名を記載してください。

故人の氏名のあとには「儀」をつけることが一般的ですが、これは「~に関する」という意味があり、他者に対して故人をへりくだって表現する文言です。葬儀会館の案内看板などでも「故〇〇〇〇儀 葬儀・告別式会場」と記載されていることが多いため、このような看板で見たことがあるという方もいることでしょう。

なお、「儀」は添え字であり、読み方はありません。

挨拶状では、以前より病気療養中であった場合や高齢で寿命により亡くなったと考えられる場合などには、そのことを記載する場合もあります。「天寿を全うし去る五月一日永眠いたしました」や、「かねてより病気で療養中でございましたが去る八月一日に永眠いたしました」などです。

ただし、挨拶状では、故人の病名などまで詳細に記載する必要はありません。また、亡くなった原因をまったく記載しなくてもマナー違反などではありませんので、亡くなった原因をどこまで知らせたいかという喪主の考え方などに応じて、表現方法を検討すると良いでしょう。

家族葬を行ったことを記載する

家族葬の挨拶状には、葬儀が家族葬で既に済んでいることを記載しましょう。また、四十九日や納骨などまでが済んでいる場合には、その旨も記載することが通例です。

また、家族葬としたことが故人の遺志によるのであれば、その旨を記載しておくと良いでしょう。家族葬を行った場合には「葬儀に参列して直接別れを告げたかったのに」などと不満が出る場合がありますが、故人の遺志であることを明記することで、このような不満が出づらくなります。

そのうえで、連絡が遅くなったことや事前に連絡をしないまま家族葬としたことなどについて、お詫びする一文を記載すると良いでしょう。

お供えなどを辞退する場合にはその旨を記載する

家族葬で葬儀を行った場合には、香典やお供え、お花などを辞退する場合が多いかと思います。そのため、お供えなどを辞退するのであれば、その旨を記載しておきましょう。

記載していなければ香典やお供えなどが届く可能性があり、香典返しの手配などが必要となります。

お世話になった感謝を記載する

家族葬の挨拶状には、故人が生前お世話になったことへのお礼を記載しましょう。たとえば、「生前故人に賜りましたご厚情に心より感謝申し上げます」「生前故人に賜りましたご厚誼に心より御礼申し上げます」などの文言がこれに該当します。

家族葬の挨拶状ではお世話になった内容などについて具体的には記載せず、一般的な表現にとどめて差し支えありません。

喪主の住所と氏名を記載する

家族葬の挨拶状は、喪主の名義で送ることが一般的です。挨拶状の最後に、喪主の住所と氏名を明記しましょう。

家族葬の挨拶状の基本マナー

挨拶状には、さまざまなマナーがあります。マナー違反をしてしまうと失礼にあたる可能性がありますので、マナーを知ったうえで作成するようにしましょう。

なお、最近では、比較的カジュアルな場面で送る挨拶状を中心に、マナーをさほど意識しないケースも増えてきました。

しかし、弔事についての挨拶状では、今でも比較的伝統的なマナーが重んじられる傾向にあります。そのため、家族葬の挨拶状ではさほどオリジナリティを意識せず、基本のマナーに従って文面を作成した方が良いでしょう。

縦書きで作成する

挨拶状は、縦書きで作成することが基本です。最近では、比較的若い世代で横書きの文書に慣れ親しんでいる人が多いためか、比較的カジュアルな場面で送る挨拶状を中心に、横書きで作成することも増えています。

しかし、家族葬の挨拶状など弔事に関する挨拶状を横書きで作成するケースは、ほとんどありません。家族葬の挨拶状を横書きで作成してしまうと、特に年配の方などを中心に、違和感を抱かせてしまう可能性が高いでしょう。

何らかの強い理由があるのでない限り、家族葬の挨拶状は、縦書きで作成することをおすすめします。

印刷の場合は楷書体または行書体がベター

最近では、挨拶状を手書きではなく、印刷して作成するケースが大半となっています。印刷であるからといって、マナー違反となるわけではありません。

しかし、挨拶状は本来、手書きをしていたものです。そのため、家族葬の挨拶状は、楷書体や行書体など、手書き文字に比較的近い印象を与えるフォントで印刷すると良いでしょう。

ゴシック体や丸ゴシック体など手書き文字とかけ離れた書体で印刷をしてしまうと、相手に違和感を抱かせてしまう可能性があります。

頭語と結語は書かないことが多い

頭語とは、「拝啓」や「謹啓」など、手紙の書き出しに記す文言です。一方、結語は「敬具」や「謹白」などの文言であり、本文の最後に記載します。

通常の挨拶状では頭語や結語を使用することがマナーとされている一方で、訃報を知らせる手紙や死亡通知では頭語や結語を記載しないことが一般的です。

ただし、家族葬の挨拶状は純粋な死亡通知や葬儀の案内とは異なるうえ、忌明け後に送ることが一般的であるため、頭語や結語を書いたからといって必ずしもマナー違反ということにはならないでしょう。

時候の挨拶は記載しない

一般的な挨拶状では、頭語の後に時候の挨拶を記載してから、本題に入ることが通例とされています。時候の挨拶とは、「早春のみぎり 〇〇様におかれましてはますます御健勝のこととお慶び申し上げます」「初秋の候 皆様ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」などの文言です。

しかし、家族葬の挨拶状など弔事の挨拶状ではこの時候の挨拶を記載せず、本題から書き始めることがマナーであるとされています。

句読点を使用しない

挨拶状では、句読点は使用しません。その理由としては、次のものが挙げられます。

  • 句読点の歴史は挨拶状の歴史よりも浅く、挨拶状に句読点を使うことは伝統的ではないため
  • 句読点は子どもが文章を読みやすいように使われ始めたものであり、挨拶状で句読点を使えば相手を子ども扱いしていることとなり失礼にあたるため
  • 句読点は文章を区切る役割をもつことから、「縁を切る」ことを連想させてしまい縁起が悪いため

なお、最近では読みやすさを重視して、横書きにした挨拶状を中心に、句読点を使うこともさほど珍しくなくなってきています。しかし、家族葬の挨拶状では引き続き伝統が重んじられる傾向にありますので、やはり基本どおり、句読点は使用しない方が良いでしょう。

忌み言葉を使用しない

家族葬の挨拶状では、忌み言葉を使用しないように注意しましょう。忌み言葉とは、縁起が悪いとされる表現のことです。

家族葬の挨拶状など、弔事の挨拶状で避けるべき忌み言葉としては、次のものが挙げられます。

  • 不幸が繰り返されることを連想させる言葉:「繰り返す」「再び」「引き続き」「追って」「重ねて」など
  • 同じ表現を繰り返す言葉:「重ね重ね」「たびたび」「またまた」「重々」「返す返す」「次々」など
  • 死を直接意識させる言葉:「死ぬ」「生きていた」「四(「シ(死)」と読めるため)」「九(「ク(苦)と読めるため)」など

ただし、「四」や「九」は、日付として使用したり、「四十九日」など行事名として使用したりすることには問題ありません。

また、宗教によって忌み言葉となる表現もあります。たとえば、仏教では「浮かばれない」や「迷う」などの表現は避けるべきだとされているため注意が必要です。

宗教によって適切な文言で記載する

宗教によって、適切な表現が異なる場合がありますので、注意しましょう。たとえば、仏教でよく用いられる「冥途」や「往生」、「成仏」などは、神道やキリスト教では使用しないとされています。

家族葬の挨拶状の例文

家族葬を行ったことを知らせる挨拶状の例文は、次のとおりです。なお、それぞれの宗教でも宗派によっては適切な表現が異なる場合がありますので、可能であれば、あらかじめ故人と同じ宗派の親族などへ確認しておくと良いでしょう。

基本の挨拶状例文

はじめに、基本の例文を紹介します。こちらの2つは、宗教を問わず広く使うことができる例文です。

父 挨拶太郎 儀 十月一日に永眠いたしました 
葬儀は故人の生前の希望により身内のみにて執り行いました
なお誠に勝手ながらお花 お供え 不祝儀につきましてはご辞退させていただきます
生前故人に賜りましたご厚誼に心よりお礼申し上げます

父 挨拶太郎 儀 去る九月一日に九十歳にて永眠いたしました 
ここに謹んでご通知申し上げます
誠に勝手ながら葬儀につきましては 故人の生前の遺志により家族のみにて執り行いました
ご通知が遅れましたこと深くお詫び申し上げます
お花 お供え 不祝儀につきましても 故人の遺志によりご辞退申し上げます
生前のご厚誼に深謝し 略儀ながら書中をもって御礼方々御挨拶申し上げます

亡くなったことと、葬儀を既に身内のみで済ませたこと、香典などの辞退と生前の親交への感謝をシンプルに伝える内容となっています。

仏式の場合の挨拶状例文

仏教の場合の家族葬の挨拶状を、2つ紹介します。

父 挨拶太郎 儀 天寿を全うし去る五月一日永眠いたしました
生前に賜りましたご厚情に深謝申し上げ ここに謹んでご通知申し上げます
故人の生前の意向により 葬儀及び納骨は近親者のみにて済ませました
お知らせが遅れたことを心よりお詫び申し上げます
なお 誠に勝手ではございますが香典 供花 供物はご辞退させていただきます
本来であれば直接お目にかかりお礼申し上げるところではございますが
略儀ながら書中をもって御礼方々御挨拶申し上げます

病気や外傷などによらず亡くなった場合には、「天寿を全うした」などの表現を使うことがあります。 なお、この「天寿をも全うした」という表現は遺族側のみが使用できる表現であり、外部の人が遺族へこの言葉をかけることは適切ではありません。

父 挨拶太郎 儀 葬儀は故人の希望により近親者のみで滞りなく執り行いました
また九月十八日に四十九日法要と納骨を済ませましたので 合わせてご連絡申し上げます
なお 御香典お供物お花などはご辞退させていただきます
本来であれば早くお伝え申し上げることではございましたが
お知らせが遅れましたこと何卒ご容赦くださいませ
生前父に賜りましたご厚誼に深く感謝申し上げ 書中にて謹んで御挨拶申し上げます

病気療養中であった方が亡くなった際には、その旨を記載することがあります。

なお、くわしい病名などまでの記載は不要です。 また、特に死因を知らせたくない場合には、単に「父 挨拶太郎 儀 八月一日に永眠いたしました」などの記載のみでも構いません。

神式の場合の挨拶状例文

神式の場合に送る家族葬挨拶状の例文は、次のとおりです。

父 挨拶太郎 儀 帰幽いたしました
誠に勝手ではございますが 故人の遺志により 葬儀は近親者のみで家族葬にて執り行いました
生前故人に賜りましたご厚情に心より感謝申し上げます
本来であれば直接お目にかかり御礼申し上げるところではございますが
略儀ながら書中をもって御礼方々御挨拶申し上げます

神式の場合には、亡くなったことを「帰幽」と表現することが一般的です。

キリスト教式の場合の挨拶状例文

キリスト教式の場合に使える挨拶状の例文は、次のとおりです。

先般 亡父 挨拶太郎 儀は地上でのつとめを終え主の御許へと召されました
尚 葬儀は故人の遺志により近親者のみにて相済ませました
故人の生前に皆様より賜りましたご厚情に 故人に代わり深謝申し上げます
本来であれば直接御礼申し上げるのが本意ではございますが 略儀ながら書中をもちまして御挨拶とさせていただきます
皆様の元にも主からの深い慰めと平安がありますようお祈り申し上げます

キリスト教では、亡くなることを「天へ召される」「昇天」などと表現します。また、キリスト教において死は「終わり」ではなく、天国へ召される喜ばしいことであるとの考えから、お悔やみの言葉を使わないことが一般的です。

まとめ

家族葬で葬儀を行うケースは年々増加傾向にあり、新型コロナ禍でさらに増加した印象です。しかし、家族葬で葬儀が営まれた場合には、故人と親交のあった方は故人にお別れを告げる機会を持てず、また亡くなったことさえ知らないままとなってしまう可能性が高いでしょう。

そのため、家族葬を行った際には、故人が生前親交のあった方に対して挨拶状を送っておくことをおすすめします。

しかし、家族葬の挨拶状の文面に迷ってしまう場合も多いのではないでしょうか?そのような場合には、当サイト「挨拶状印刷.jp」のご利用がおすすめです。挨拶状印刷.jpでは、家族葬の挨拶状など、シーンに沿った挨拶状のテンプレートを数多く用意しております。

テンプレートは編集することもできますので、オリジナルの挨拶状を簡単に作成頂くことが可能です。家族葬の挨拶状作成でお困りの際には、ぜひ挨拶状印刷.jpのサービスをご利用ください。