退職の挨拶状を送るべき時期

退職をした際には、お世話になった取引先などに挨拶状を送ることがマナーの一つです。では、退職の挨拶状を送る時期は、いつが適切なのでしょうか?

今回は、退職の挨拶状の文例を紹介するとともに、退職の挨拶状を送る時期や注意点などについても詳しく解説します。

退職の挨拶状とは

退職の挨拶状とは、退職にともなってお世話になった取引先などに送る書状です。退職する旨を伝えるとともに、これまでお世話になった感謝の想いなどを記載することが通例です。

単に退職した事実を伝えるのみであれば、メールなどのみで事足りるかもしれません。しかし、お礼状を送ることで相手への敬意や感謝の想いを示すこととなります。

特に、退職後に独立開業を予定している場合などには、退職の挨拶状をきちんと送っておくことで、今後の仕事へとつながる可能性もあるでしょう。

お世話になった相手へ退職の挨拶状を送ることは、マナーの1つです。普段はメールなどで要件を済ませている場合であっても、ぜひ退職などの節目の際には書面で挨拶状を送ることをおすすめします。

退職の挨拶状を送る時期はいつ?

退職の挨拶状は可能な限り、退職の1か月前から2週間前までに送付することが適切であるとされています。

ただし、職種や状況によっては、あまり早くに取引先へ退職を伝えることが適切ではない場合もあるでしょう。また、急な退職であり、事前に挨拶状の準備が難しい場合もあるかと思います。

そのような際には、退職後に送っても失礼ではありません。ただし、その場合であっても退職後1ヶ月以内には送るようにしましょう。あまりにも遅いと、誠意がないと捉えられてしまう可能性があるためです。

退職の挨拶状は誰が誰に送る?

退職の挨拶状は、誰から誰に送るものなのでしょうか。なお、ここでは社長や役員ではなかった人が退職する場合を前提に解説します。

退職する本人から送る

退職の挨拶状は、退職する本人から送ることが通例です。退職をした人が社長や役員などであったのでない限り、退職をする会社から退職の挨拶状を送ることは、ほとんどありません。

お世話になった取引先などに送る

退職の挨拶状を送る相手の範囲に、特に厳密な決まりがあるわけではありません。一般的には、取引先などその会社で勤務するにあたってお世話になった相手に対して、送付すると良いでしょう。

なお、相手先の企業にお世話になった相手が複数いる場合には連名の宛先で送ることもできますが、それぞれの相手へ個別に送った方が丁寧です。

退職の挨拶状を送る際の注意点

挨拶状には、挨拶状独特のマナーが存在します。退職の挨拶状を送る際には、次の点に注意しましょう。

退職理由は具体的に書かなくても良い

退職の挨拶状を送るにあたって、必ずしも退職の理由を書かなければならないわけではありません。たとえば、「定年退職」や「独立開業のため」など比較的前向きな退職理由であれば記載して良いでしょう。

一方で、元の会社と関係性が悪化しての退職などあまり理由を知られたくない場合や、家族の介護が必要になったことなどプライベートな事情による場合もあるはずです。このような場合には詳細な理由などには触れず、「一身上の都合」など、濁した表現で構いません。

元の会社や同僚などの悪口などは書かない

退職の経緯などによっては、もとの会社や同僚などに対して良くない印象を持っている場合があるかもしれません。しかし、退職の挨拶状には、元の会社や同僚などの悪口などは書かないようにしましょう。

退職の挨拶状はあくまでも相手へ退職を知らせ、感謝を伝えるものであり、不平不満や愚痴などをこぼすためのものではないためです。また、取引先などへ会社などの悪口を書いた書面を送ってしまえば、法的なトラブルに発展するリスクもあります。

頭語と結語を記載する

退職の場合に限らず、挨拶状をいきなり本文から書き始めることは適切ではありません。はじめに、「拝啓」「謹啓」などの頭語から書き始めることが通例です。

頭語にはさまざまな種類がありますが、退職の挨拶状ではもっとも一般的な「拝啓」を記載すればよほど間違いないでしょう。より改まった表現である「謹啓」などを使うこともできます。

なお、頭語には次で解説をする時候の挨拶を省略する際に使う「前略」も存在します。しかし、挨拶状で時候の挨拶を省略することは好ましくないため、「前略」を使うことはほとんどありません。

頭語を記載したら、文の最後は結語で締めます。結語にもさまざまな種類がありますが、使った頭語によって使うことのできる結語に決まりがあります。

頭語が「拝啓」であれば「敬具」「敬白」など、頭語が「謹啓」であれば「謹白」「謹言」などを使いましょう。

時候の挨拶を記載する

頭語に続けて、時候の挨拶を記載します。頭語の後、1文字分ほどのスペースを空けてから時候の挨拶を書き始めると、バランスが良いでしょう。

時候の挨拶とは、「陽春の候 皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」「春暖のみぎり 皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます」などの書き出しの挨拶のことです。「陽春」や「春暖」と記載した箇所は季節ごとに使える表現が決まっていますので、退職の挨拶状を送る時期に合った季語を記載しましょう。

なお、会社や団体宛に送る場合には、「貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます」「貴社なお一層ご隆盛のこととお慶び申し上げます」のように、企業などの発展を願う言葉を入れることが通例です。

一方、個人宛に送る場合には「皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」「皆様益々ご健勝にてご活躍のこととお慶び申し上げます」など、健康や活躍を願う言葉を入れると良いでしょう。

「私こと」や「私儀」は下の方に記載する

退職の挨拶状では、頭語と時候の挨拶のあと、「さて、私こと」や「さて、私儀」などのつなぎ言葉を記載してから本題に入ることが一般的です。この「さて、私こと」や「さて、私儀」の言葉は、文章の端へ記載することが通例となっています。

つまり、縦書きの挨拶状であれば用紙の下の方に記載し、横書きの挨拶状であれば用紙の右の方に記載をするということです。

通常の文章は、縦書きであれば当然上から、横書きであれば左から書き始めますので、下の方や右の方から文章がはじまることに違和感があるかもしれません。しかし、これは挨拶状独特のルールですので、これにならって作成すると良いでしょう。

多くのテンプレートでもこれらの言葉や下の方や右の方から始まっていますが、レイアウトがずれてしまっているわけではなく、あえてそのように作成しています。また、この「さて、私こと」や「さて、私儀」は、他の文字よりも少し小さく記載することが通例です。

お世話になったお礼を記す

退職の挨拶状では、相手にお世話になったお礼の文言を盛り込むようにしましょう。単に退職の事実や今後のことを伝えるのみならずお礼の文言を記載することで、より想いの伝わる、誠意ある挨拶状となります。

退職の挨拶状の文例

最後に、退職にともなう挨拶状の文例を3つ紹介します。当サイト「挨拶状印刷」ではさらに多くの退職挨拶状のテンプレートをご用意しておりますので、退職の挨拶状を送る際には、そちらもぜひご参照ください。

一般的な退職挨拶状の例

一般的な退職の挨拶状の文例は、次のとおりです。

拝啓 陽春の候 皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます
さて 私こと          
このたび一身上の都合により株式会社挨拶を退職することとなりました
いたらぬ私ではございましたが 皆様方のおかげで大過なく勤めさせていただき 心より御礼申し上げます
貴重な経験として これからの人生に生かしていく所存でございます
末筆ではございますが 改めて長年のご厚情に深謝するとともに 
皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げます
                              敬具
令和4年4月

挨拶 太郎

①頭語から書き始めます。頭語にはさまざまな種類が存在しますが、退職の挨拶状では「拝啓」を使用すれば間違いありません

②挨拶状を送る季節に合った季語を記載します

③横書きの場合には右の方から、縦書きの場合には下の方から書き始めます

④相手への感謝を伝えましょう

⑤頭語に合った結語を記載します。頭語が「拝啓」であれば「敬具」などとなります

⑥退職する本人から送ります

独立開業をする場合の退職挨拶状の例

退職後、独立開業する場合の挨拶状の文例は、次のとおりです。

拝啓 残暑の候 益々ご健勝にてご活躍のこととお慶び申し上げます
                      さて 私こと          
このたび 一身上の都合により長年お世話になりました株式会社挨拶を退職いたしました
在職中は公私にわたり大変お世話になりましたこと 深く感謝いたします
また 退職に際しましては 過分のお餞別や結構な記念品を賜り ご高配の程有難く厚くお礼申し上げます
今後は かねてからの夢であった独立開業に向けた準備を進めたいと存じます
何とぞ今後とも変わらぬご指導とご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます
まずは御礼かたがたご挨拶申し上げます
                               敬具 
 令和4年8月

挨拶太郎

①頭語から書き始めます。退職の挨拶状では「拝啓」を使用すれば間違いありません

②挨拶状を送る季節に合った季語を記載します

③横書きの場合には右の方から、縦書きの場合には下の方から書き始めます

④相手への感謝を伝えましょう

⑤頭語に合った結語を記載します。頭語が「拝啓」であれば「敬具」などとなります

⑥退職する本人から送ります

定年による退職挨拶状の例

定年による退職の場合に送る挨拶状の文例は、次のとおりです。

拝啓 春暖のみぎり 皆様におかれましては益々ご健勝のこととお慶び申し上げます
                      さて 私儀
この度 3月末日をもちまして株式会社挨拶を定年退職いたしました
昭和〇年の入社以来40年余の永きにわたり 皆様の温かいご指導とご厚情に支えられ
大過なく勤めさせて頂きましたこと 心より厚く御礼申し上げます
今後は皆様より賜りましたご厚情ご教示を大切に 社会にお返しができるような奉仕をしていきたく存じます
長い間皆様に賜りました格別のご厚情に改めて感謝申し上げるとともに
さらなるご発展を心より祈念申し上げます
                         敬具
 令和4年4月吉日
挨拶 太郎

①頭語から書き始めます。退職の挨拶状では「拝啓」を使用すれば間違いありません

②挨拶状を送る季節に合った季語を記載します。なお、その後に続く「候」「みぎり」はどちらでも構いませんが、「みぎり」のほうがやわらかい印象となります

③横書きの場合には右の方から、縦書きの場合には下の方から書き始めます

④相手への感謝を伝えましょう

⑤頭語に合った結語を記載します。頭語が「拝啓」であれば「敬具」などとなります

⑥退職する本人から送ります

まとめ

これまでの勤務で取引先などにお世話になったにもかかわらず、退職を機に関係性が切れてしまっては寂しいものです。メールなどで単に退職の事実を伝えるのみならずきちんと挨拶状を送ることで、今後のお付き合いへとつなげていくと良いでしょう。

しかし、挨拶状にはさまざまなマナーやルールが存在し、慣れていない人が一から文面を作成することは容易ではありません。そこで、ぜひご活用頂きたいのが当サイト「挨拶状印刷」のサービスです。

挨拶状印刷では、退職の挨拶状を含むさまざまな挨拶状のテンプレートを取り揃えております。もちろん、テンプレートの一部を変更し、独自の文面として印刷することも可能です。

退職の挨拶状を送る際には、ぜひ挨拶状印刷をご利用ください。