挨拶状の季語

挨拶状に季節の挨拶を添えることで、挨拶状がほんのりと華やぎ、やさしい印象となります。では、挨拶状で使用できる季語には、どのようなものがあるのでしょうか?

今回は、それぞれの季節に送る挨拶状で使用できる季語や、季語の考え方として参考となる二十四節気を紹介します。

挨拶状の季語とは

挨拶状では、「時候の挨拶」として季語を含んだ挨拶文を記載することがマナーとされています。

たとえば、「早春の候」や「初秋のみぎり」のようなフレーズです。時候の挨拶を添えることで、挨拶状からほんのりと季節感を感じられることでしょう。

時候の挨拶は、日本の伝統的なならわしです。せっかく挨拶状を送るのであれば、適切な季語を添えて相手と季節感を共有することをおすすめします。

なお、時候の挨拶の書き方には、「漢語調」と「口語調」の2つが存在します。

漢語調とは「桜花の候」や「桜花のみぎり」など、季語に「~の候」や「~のみぎり」をつける形態です。ビジネスシーンで送る挨拶状では、こちらを使用することが多いでしょう。

「候」と「みぎり」はいずれも「~のころ」を意味します。いずれを使用しても構いませんが、「~のみぎり」のほうがやや柔らかい印象となるため、主に女性が使用することの多い表現です。

一方、口語調とは「桜の花のたよりが届くころとなりました」など、季語をやわらかく言い換えた形態です。女性がプライベートで送る挨拶状では、こちらを使用することが多いでしょう。

挨拶状で使える月ごとの季語

挨拶状で使用することができる季語は季節ごとに決まっており、主なものは次のとおりです。ただし、厳密にいえば月ごとに分けられるものではなく、後ほど解説をする二十四節気や相手が住む地域でのその時期の気候などよって使い分けるものです。

たとえば、「梅雨」は一般的に6月の季語として分類しているものの、最近は入梅が遅いこともあり、6月の前半ではまだ梅雨入りしていないことも少なくありません。そうであるにも関わらず「入梅の候」と記載した挨拶状を送ってしまえば、やや季節外れな印象となってしまうでしょう。

あまり形式にとらわれず、肌で感じた気候を表現するとズレが生じにくくなります。

また、せっかく送る挨拶状ですから、相手をげんなりさせる表現ではなく、気持ちの良い表現を選ぶことも一つです。たとえば、まだまだ寒い日の続く2月に「余寒の候」と記載しても、もちろん誤りではありません。

しかし、「立春の候」や「向春の候」としたほうが、あたたかな印象を感じるのではないでしょうか?このあたりにも配慮をすると、より素敵な挨拶状に仕上がることでしょう。

なお、紹介する季語のうち、二十四節気に関連するものには「★」を付しました。こちらを使用する際には、後ほど解説をする二十四節気にて、使用できる時期を確認しておくことをおすすめします。

1月の季語

1月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 初春
  • 新春
  • 厳寒
  • 厳冬
  • 寒冷
  • 大寒★
  • 立春★

2月の季語

2月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 余寒
  • 立春★
  • 春寒
  • 向春
  • 節分★
  • 浅春

3月の季語

3月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 早春
  • 春暖
  • 浅春
  • 春分★
  • 春色

4月の季語

4月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 陽春
  • 桜花
  • 春暖
  • 惜春

5月の季語

5月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 新緑
  • 薫風
  • 立夏★
  • 晩春
  • 若葉

6月の季語

6月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 梅雨
  • 入梅★
  • 向暑
  • 軽暑
  • 初夏
  • 夏至★

7月の季語

7月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 盛夏
  • 猛暑
  • 夏至★
  • 小暑★
  • 大暑★
  • 炎暑
  • 夏祭

8月の季語

8月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 残暑
  • 秋暑
  • 大暑★
  • 晩夏
  • 立秋★
  • 処暑★

9月の季語

9月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 初秋
  • 処暑★
  • 白露★
  • 秋涼
  • 涼風
  • 野分
  • 秋分★
  • 秋桜
  • 新涼
  • 新秋

10月の季語

10月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 菊花
  • 秋冷
  • 錦秋
  • 錦繍
  • 紅葉
  • 仲秋
  • 秋涼
  • 清秋
  • 霜降★

11月の季語

11月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 晩秋
  • 霜降★
  • 向寒
  • 立冬★
  • 小雪★
  • 落葉
  • 深秋
  • 深冷

12月の季語

12月に送る挨拶状で使われる季語は、次のとおりです。

  • 初冬
  • 師走
  • 寒冷
  • 大雪★
  • 寒気
  • 冬至★
  • 歳末

1年を通して使える表現

1年を通して使用できる表現に、「時下」があります。相手の繫栄や成功を願うフレーズとつなげて、「時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」などと使用します。

ビジネスシーンでは、この「時下」という表現を用いることも少なくありません。ただし、季節感のない表現ではありますので、やや形式的な印象となることは否めないでしょう。

挨拶状の季語で意識したい「二十四節気」

「二十四節気(にじゅうしせっき)」とは、1年を24分割した季節のことです。太陽の黄道上の動きを基準としてまず春夏秋冬の4つに分け、さらにそれぞれを6つに分けます。

また、この他に季節の変わり目の目安となる「雑節(ざっせつ)」も存在します。

挨拶状に添える季語では、この二十四節気の表現を用いることも少なくありません。しかし、たとえば二十四節気とは関係のない「新緑の候」などは新緑が芽吹いている5月いっぱいで使用できる一方で、5月5日頃までを示す「立夏」を5月末ごろに届く挨拶状で用いてしまえば、やや間の抜けた印象になってしまいます。

相手によっては、「5月初旬に書いたものの、今の時期まで投函を忘れてしまっていたのかな」などと思うかもしれません。そのため、二十四節気を示すフレーズを季語として用いる場合には、使用する時期によく注意する必要があるでしょう。

春を表す二十四節気名は、次のとおりです。

  • 立春(りっしゅん):2月4日頃
  • 雨水(うすい):2月19日頃
  • 啓蟄(けいちつ):3月5日頃
  • 春分(しゅんぶん):3月21日頃
  • 清明(せいめい):4月5日頃
  • 穀雨(こくう):4月20日頃

夏を表す二十四節気名は、次のとおりです。

  • 立夏(りっか):5月5日頃
  • 小満(しょうまん):5月21日頃
  • 芒種(ぼうしゅ):6月6日頃
  • 夏至(げし):6月21日頃
  • 小暑(しょうしょ):7月7日頃
  • 大暑(たいしょ):7月23日頃

秋を表す二十四節気名は、次のとおりです。

  • 立秋(りっしゅう):8月8日頃
  • 処暑(しょしょ):8月23日頃
  • 白露(はくろ):9月8日頃
  • 秋分(しゅうぶん):9月23日頃
  • 寒露(かんろ):10月8日頃
  • 霜降(そうこう):10月24日頃

冬を表す二十四節気名は、次のとおりです。

  • 立冬(りっとう):11月7日頃
  • 小雪(しょうせつ):11月22日頃
  • 大雪(たいせつ):12月7日頃
  • 冬至(とうじ):12月21日頃
  • 小寒(しょうかん):1月5日頃
  • 大寒(だいかん):1月21日頃

雑節

雑節とは、季節の変わり目の目安となるものです。雑節には次のものが存在します。

行事が行われることも多く、今も生活に根付いているものも少なくありません。

  • 社日(しゃにち):春分と秋分にそれぞれもっとも近い戊の日を指します
  • 節分(せつぶん):立春の前日です。もとは春夏秋冬にそれぞれ存在しましたが、今は春のみ残っています
  • 彼岸(ひがん):春分と秋分のそれぞれ前後の3日ずつの期間です。それぞれ、7日間が彼岸に該当します
  • 土用(どよう):立春、立夏、立秋、立冬前のそれぞれ18日間を指します
  • 八十八夜(はちじゅうはちや):立春から数えて88日目にあたる日をいいます
  • 入梅(にゅうばい):芒種の後に訪れる壬の日を指します
  • 半夏生(はんげしょう):太陰太陽暦では夏至より10日後とされていました
  • 二百十日(にひゃくとおか)           :立春から数えて210日目にあたる日を指します
  • 二百ニ十日(にひゃくはつか):立春から数えて220日目にあたる日を指します

挨拶状で季語を記載しないケースとは

挨拶用には、季語を添えた時候の挨拶を記載しないケースがあります。一般的に時候の挨拶を記載しないとされる挨拶状は、次のとおりです。

お詫びの手紙

こちらの不手際などを詫びる手紙では、季語などは記載しません。時候の挨拶と入れることでやや悠長な印象を与えてしまい、緊張感をともなうべきお詫びの手紙にはそぐわないためです。

お見舞いの手紙

お見舞いの手紙では、時候の挨拶を記載しないとされています。なぜなら、お見舞いの手紙は入院などの知らせを聞いて急いで記載するものであるためです。

死亡通知

身内などが亡くなったことを知らせる死亡通知にも、季語を添えないことが通例とされています。死亡通知は身内が亡くなったことを取り急ぎ伝えるものであり、時候の挨拶を記載する余裕などはないことが多いと考えられるためです。

相手に会った後ですぐに送るお礼状

たとえば、相手の両親に結婚の挨拶をした場合など、その日のうちにお礼状を出す場合があります。この場合には、時候の挨拶は必要ありません。

なぜなら、時候の挨拶とは離れている相手に「こんな季節になりましたね」と季節感を共有するものであり、会ったばかりの相手に対して記載することは不適当であるためです。

挨拶状の基本構成

最後に、挨拶状の基本構成を確認しておきましょう。書くべき内容が異なったり一部を省略したりする場合はあるものの、挨拶状は基本的にこのような構成となっています。

頭語

挨拶状はまず、頭語から書き始めます。頭語は決まったフレーズがありますので、シーンに応じて使い分けると良いでしょう。

  • 一般的な挨拶状:「拝啓」など
  • 目上の相手へ送る挨拶状やかしこまった挨拶状:「謹啓」など
  • 返信の手紙:「拝復」など
  • 取り急ぎ送る挨拶状:「急啓」など。この場合には時候の挨拶は省略します
  • 親しい方への手紙:「前略」など。この場合には時候の挨拶は省略します

なお、これら以外の表現も存在しますが、あまり一般的ではない表現を使用すれば相手に伝わらなかったり、誤字であると思われてしまったりする可能性があります。そのため、基本的にはここで紹介したものを使用すると良いでしょう。

季語を用いた時候の挨拶

頭語に続けて、季語を用いた時候の挨拶を記載します。こちらについては、上で記載した解説をご参照ください。

相手の健康や成功を願う挨拶文

時候のあいさつに続けて、相手の健康や成功を願う挨拶文を記載します。適切なフレーズは送り先が会社などである場合と一般個人である場合とで異なっており、それぞれの例は次のとおりです。

  • 会社宛の場合:「貴社ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます」や「貴社におかれましてはますますご盛栄のことと存じます」など
  • 個人宛の場合:「皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」や「〇〇様におかれましてはますますご清祥のことと存じます」など

会社宛の場合には、事業の発展や成功を願うフレーズを記載しましょう。例で挙げた「ご隆昌」や「ご盛栄」のほか、「ご隆盛」、「ご清栄」などです。

一方、個人宛の場合には、健康を意味する「ご健勝」や幸せに過ごすことを意味する「ご清祥」などを使うことが多いでしょう。

なお、ここまでで挙げた「頭語」と「時候の挨拶」、「相手の健康や成功を願う挨拶文」をまとめて「前文」と呼ぶこともあります。これらをまとめると、次のようになります。

  • 「拝啓 新緑のみぎり 皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」
  • 「謹啓 早春の候 貴社ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます」

また、会社から取引先などに対して送る場合には、これに続けて「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます」などと日頃お世話になっていることの挨拶を記載してから、本題に入る場合もあります。

本文

前文の次に、本文を記載します。本文では、その挨拶状で伝えたい内容を簡潔に記載しましょう。

結びの挨拶

本文の最後に、結びの挨拶を記載します。結びの挨拶は、「相手の健康や発展を祈る文言や今後の変わらぬ付き合いを願う言葉」と、「書中での挨拶を詫びる文言」から構成されることが多いでしょう。

相手の健康や発展を祈る文言や今後の変わらぬ付き合いを願う言葉の例は、次のとおりです。

  • 今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます
  • 引き続き倍旧のお引き立てを賜りますようよろしくお願い申し上げます
  • 皆様のますますのご健勝を心よりお祈りいたしております
  • 皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます

また、ここでも季語を活用し、季節感を出すこともできます。たとえば、次のようなフレーズです。

  • 春爛漫の折 皆様のますますのご健康とご多幸をお祈り申し上げます
  • 年末ご多忙の折ではございますが どうぞご自愛専一にお過ごしくださいませ
  • 残暑なお厳しき折柄 くれぐれもご自愛下さいませ

これらに続けて、書中での挨拶を詫びる文言を記載することもあります。たとえば、次のようなフレーズです。

  • まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
  • 取り急ぎ書中をもって御通知申し上げます

これは、本来であれば伺ってお礼や御挨拶を申し上げるべきところ、挨拶状での連絡となったことを詫びるものです。

結語

挨拶状の最後は、結語で締めます。使用することのできる結語は使用した頭語によって決まりますので、基本の組み合わせを覚えておくと良いでしょう。

  • 頭語が「拝啓」の場合:「敬具」など
  • 頭語が「謹啓」の場合:「謹言」や「謹白」など
  • 頭語が「拝復」の場合:「敬具」など
  • 頭語が「急啓」の場合:「草々」など
  • 頭語が「前略」の場合:「草々」など

なお、結語は「敬 具」のように文字の間に1文字分のスペースを入れると、バランスを取りやすくなります。

まとめ

挨拶状に適切な季語を添えることで、相手と季節感を共有するあたたかみのある印象となります。挨拶状にはその時期の気候に添った季語を記載すると、相手に喜ばれやすくなるでしょう。

しかし、挨拶状を書くことに慣れていなければ、適切な季語を検討したり挨拶状の文面を検討したりすることのハードルを高く感じてしまうかもしれません。その際には当サイト「挨拶状印刷.jp」のご利用がおすすめです。

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