偲び草の挨拶状

偲び草とは、神式やキリスト教式における、香典返しにあたるものです。偲び草を送る際には品物のみを送るのではなく、挨拶状を添えるのがマナーとされています。この挨拶状が、偲び草の挨拶状です。

では、偲び草の挨拶状は、どのように作成すれば良いのでしょうか?今回は、偲び草の挨拶状の書き方を解説するとともに、シーンごとの文例を紹介します。

偲び草とは

偲び草とは、神式やキリスト式などの場合に使用される言葉であり、仏教でいう「香典返し」にあたるものです。

「香典」は仏教用語であり、神式やキリスト教式では用いません。しかし、神道やキリスト式であっても、葬儀の際に金品などを送る風習はあり、それぞれ次の名称を用います。

  • 神式:「御玉串料」など
  • キリスト教式:「御花料」「献花料」など

そして、神式やキリスト式の場合にも、御玉串料や御花料などをもらった相手に対して区切りとなる行事のあとにお返しをする、「香典返し」のような風習があります。この香典返しにあたるものが「偲び草」です。

偲び草は香典返しと同じく、従来は相手のもとに出向いて手渡すものとされていました。しかし、最近では双方ともに忙しい場合も多いことから、郵送する場合がほとんどです。

郵送にて偲び草を送る際には挨拶状を添えて送るか、先に挨拶状を別送したうえで品物を送ります。

偲び草の挨拶状を送るタイミング

仏式の場合における香典返しは、四十九日の忌明け後に行うことが通例とされています。では、偲び草に添える挨拶状は、どのタイミングで送れば良いのでしょうか?送付のタイミングは、次のとおりです。

神式の場合

神式の場合には、故人が亡くなってから50日目に行う「五十日祭」をもって忌明けとなります。偲び草の挨拶状は、この忌明け後すみやかに送付することが一般的です。

キリスト教式(プロテスタント)の場合

キリスト教式(プロテスタント)の場合には、故人が亡くなってから1ヶ月目に行う「昇天記念日」が一つの区切りとなります。そのため、偲び草の挨拶状は、この行事の後ですみやかに送付すると良いでしょう。

なお、キリスト教においてそもそも死は忌まわしいものではなく、「忌明け」の概念はありません。

キリスト教式(カトリック)の場合

キリスト教式(カトリック)の場合には、故人が亡くなってから30日目に行う「追悼ミサ」が区切りの行事となります。そのため、偲び草の挨拶状は、この行事の後速やかに送りましょう。

偲び草の挨拶状の基本構成

ここでは、偲び草の挨拶状の基本構成を順に解説します。

偲び草の挨拶状は、基本の構成さえ押さえてしまえば難しいものではありません。基本の構成は、次のとおりです。

なお、後ほど紹介する文例と併せて確認すると、よりイメージが湧きやすくなるでしょう。

頭語

はじめに、頭語を記載します。頭語とは、挨拶状のはじめに記載する定型的な表現で、会話での「こんにちは」などに相当するものです。

偲び草の挨拶状では、次の2つの頭語を知っておけば問題ないでしょう。

  • 拝啓:もっとも基本となる頭語です
  • 謹啓:より丁寧な挨拶状で用いる頭語です。目上の相手に送る場合やよりかしこまった場面では、こちらを使用します

偲び草の挨拶状では、いずれを使用しても誤りではありません。ただし、「謹啓」の方がより改まった印象を与えることができるため、送付先に目上の人が多い場合には、こちらのほうがより適切でしょう。

安否の挨拶

偲び草の挨拶状では、「初秋の候」など季節感を表現する時候の挨拶は記載しないことが通例です。しかし、相手の状況を気遣う安否の挨拶は記載しても差し支えなく、記載した方が丁寧な挨拶状となりやすいでしょう。

安否の挨拶とは、「御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます」などの表現です。

なお、弔事以外の挨拶状では「皆様におかれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます」などの表現がよく用いられます。しかし、「慶」という文字を弔事の場面で使用することに抵抗を感じる場合もあるため、例文ではこれを用いない表現としています。

葬儀などへのお礼

安否の挨拶に続けて、葬儀へ参列してくれたことや玉串料・御花料などをいただいたことへのお礼を記載します。たとえば、「先般 父太郎儀 帰幽の際には御懇篤なる御弔意ならびに御鄭重なる御厚志を賜りまして 誠に有難く厚く御礼申し上げます」などです。

「御弔意」とは亡くなったことを悲しみ弔う気持ちを意味し、お悔やみを伝えることや葬儀へ参列してくれたことなどを意味します。また、「御厚志」とは親切な心遣いを意味しますが、挨拶状で使用する場合、金品などの贈り物を指すことが多いでしょう。

なお、故人が亡くなることを神式では「帰幽」、キリスト教式では「召天」や「帰天」などと表現します。宗派ごとの異なる表現にも注意しましょう。

無事に区切りの行事を終えた旨

次に、無事に区切りとなる行事を終えた旨を報告します。たとえば、「お陰をもちまして このたび五十日祭の祭事を滞りなく相営みました」などです。

行事名は誤りのないよう、しっかりと確認したうえで記載しましょう。

偲び草を送る旨

次に、偲び草の品物を送ることを記載します。

「つきましては偲び草のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます」など、品物を送ったことを明確にしつつ、つつましく記載すると良いでしょう。

結びの挨拶

本文の最後に、結びの挨拶を記載します。たとえば、「早速拝眉の上御礼申し上げるべきところではございますが 書中をもちまして謹んで御挨拶申し上げます」などです。

最近では偲び草を郵送するケースが多いものの、上でも解説をしたとおり、本来は相手のもとへ訪問してお渡しするべきものです。そのため、書中での略式の挨拶を詫びる一文を記載するのが通例となっています。

なお、「拝眉」とは、相手に会うことをへりくだって表現する言葉です。似た言葉に、相手の元へ出向くことをへりくだって表す「拝趨」もあり、こちらもよく使用されます。

結語

文章の最後は、結語で締めます。結語とは、頭語とセットとなる定型的な表現であり、「さようなら」に相当するものです。

使用した頭語によって使用できる結語が次のとおり制限されます。

  • 頭語が「拝啓」の場合:「敬具」「敬白」など
  • 頭語が「謹啓」の場合:「謹言」「謹白」など

組み合わせを誤るとちぐはぐな印象となってしまいますので、基本の組み合わせを覚えておくと良いでしょう。

偲び草の挨拶状の例文

挨拶状の基本構成が分かっても、一から文章を組み立てることに対してハードルが高いと感じる人もいるのではないでしょうか?ここでは、宗教ごとに、偲び草の挨拶状の例文を3つ紹介します。

神式の場合

神式の場合における偲び草の挨拶状の文例は、次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
先般 父太郎儀 帰幽の際には御懇篤なる御弔意ならびに御鄭重なる御厚志を賜りまして 
誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび五十日祭の祭事を滞りなく相営みました
つきましては偲び草のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝眉の上御礼申し上げるべきところではございますが 
書中をもちまして謹んで御挨拶申し上げます   謹 白

神式の場合には、故人が亡くなったことを「帰幽」と表現します。また、区切りとなる行事は「五十日祭」ですので、無事にこの日を終えたことを文中で報告しましょう。

キリスト教式(プロテスタント)の場合

キリスト教式(プロテスタント)の場合における偲び草の挨拶状の文例は、次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
先般 父太郎儀 召天の際には御懇篤なる御弔意ならびに御鄭重なる御厚志を賜りまして 
誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび召天記念会を滞りなく相営みました
つきましては偲び草のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝眉の上御礼申し上げるべきところではございますが 
書中をもちまして謹んで御挨拶申し上げます   謹 白

キリスト教式(プロテスタント)の場合には、故人が亡くなったことを「召天」などと表現します。また、区切りとなる行事は「召天記念会」などですので、この行事を無事に終えたことを文中で報告しましょう。

キリスト教式(カトリック)の場合

キリスト教式(カトリック)の場合における偲び草の挨拶状の文例は、次のとおりです。

謹啓 御尊家御一同様には益々ご清祥にお過ごしの御事と存じます
先般 父太郎儀 帰天の際には御懇篤なる御弔意ならびに御鄭重なる御厚志を賜りまして 
誠に有難く厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして このたび追悼ミサを滞りなく相営みました
つきましては偲び草のしるしまでに心ばかりの品をお送り致しましたので 何卒御受納くださいますようお願い申し上げます
早速拝眉の上御礼申し上げるべきところではございますが 
書中をもちまして謹んで御挨拶申し上げます   謹 白

キリスト教式(カトリック)の場合には、故人が亡くなったことを「帰天」などと表現します。また、区切りとなる行事は「追悼ミサ」などですので、この行事を無事に終えたことを文中で報告しましょう。

偲び草の挨拶状を作成する際の注意点

偲び草の挨拶状を作成する際には、次の点に注意して作成すると良いでしょう。

句読点は使用しない

偲び草の挨拶状など弔事にまつわる挨拶状では、句読点は使用しないことが基本です。

これには、句読点は子どもが文章を読みやすくなるように作成されはじめたものであることから句読点を使用することで相手を子ども扱いすることになるなど、さまざまな理由が存在します。

最近では、読みやすさを重視して、挨拶状で句読点を使用することも少なくありません。しかし、弔事の場面では今も句読点を使わないことが一般的であるため、原則として句読点は使用せずに作成した方が良いでしょう。

縦書きが基本

偲び草の挨拶状は、縦書きで作成するのが基本です。

元々、挨拶状は弔事以外で送るものであって、縦書きとするのが基本とされていました。最近では、比較的カジュアルな場面で送る挨拶状を中心に、横書きとすることも増えています。

しかし、弔事にまつわる場面では比較的伝統が重んじられる傾向にあり、挨拶状を縦書きにすることは、今も一般的ではありません。そのため、偲び草の挨拶状は、特に理由のない限り、縦書きで作成した方が良いでしょう。

忌み言葉に注意する

偲び草の挨拶状を作成する際には、忌み言葉に注意しましょう。

忌み言葉とは、その場面において縁起がわるく、避けるべきとされる表現です。弔事の場面における忌み言葉には、次のものなどが挙げられます。

  • 不幸が重なることを連想させる言葉:「次々」「続けて」「重々」「返す返す」「重ね重ね」「またまた」など
  • 生死を直接的に表現する言葉:「死ぬ」「死んだ」「生きていた頃」など

宗教ごとで異なる表現に注意する

普段はあまり宗教を意識しない場合であっても、葬儀にまつわる場では宗教ごとの作法や表現が重視されます。挨拶状においても、その宗教にそぐわない表現は避けた方が良いでしょう。

たとえば、「供養」や「成仏」などの表現は仏教の考え方に由来するものであり、神式やキリスト教式の場合には使用しません。故人の宗教にそぐわない表現をうっかり使用してしまうことがないよう注意してください。

まとめ

偲び草の挨拶状とは、仏教でいうところの「香典返しの挨拶状」にあたるものです。神式やキリスト教式の場合には「香典返し」という言葉は用いず、「偲び草」と表現することが多いでしょう。

偲び草の挨拶状は、区切りとなる行事の後、速やかに送ることがマナーです。時期を逸することのないよう、早くから手配をしておくことをおすすめします。

しかし、一から偲び草の挨拶状の文章を組み立てることに、不安を感じる人も少なくないのではないでしょうか?そのような際には、当サイト「挨拶状印刷.jp」のテンプレートのご利用がおすすめです。

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