挨拶状の句読点

挨拶状では、句読点を使わないことが通例となっています。特に気にしていなかったという方も多いかもしれませんが、これまで受け取った挨拶状を見返してみると、句読点がないものが多いことに気がつくかもしれません。

では、なぜ挨拶状では句読点を使用しないのでしょうか?今回は、挨拶状における句読点のルールを紹介するとともに、その他のマナーや注意点についても詳しく解説します。

挨拶状とは

挨拶状とは、会社の移転や社長交代、個人の転勤などさまざまな節目の際に、取引先などお世話になっている相手に対して挨拶をする書状のことです。また、年賀状や暑中見舞いなど季節の挨拶をする手紙も挨拶状となります。

最近では電子メールが普及していることもあり、書面での挨拶状を送る機会は減っているかもしれません。

しかし、挨拶状は単に相手へ事実を伝えるものではなく、相手を気遣ったり相手への敬意を示したりする役割も果たします。むしろ、送る人が少なくなっている昨今であるからこそ、節目ごとにきちんと挨拶状を送ることがビジネス上の差別化となる可能性もあるでしょう。

適切なタイミングで適切な挨拶状を送ることはビジネスマナーの一つであるといえますので、節目の際には、しっかりとした挨拶状を送りたいものです。

挨拶状に句読点はつけない理由

通常の文章では、句読点(「、」や「。」)を付けることが一般的です。しかし、挨拶状では、句読点を使わないことが原則であるとされています。

その理由は次のとおりです。

挨拶状に句読点をつけない理由

・伝統的ではないから
・相手を子ども扱いすると捉えられる可能性があるから
・「縁を切る」を連想させてしまうから

伝統的ではないから

日本における句読点の歴史は浅く、使われるようになったのは明治以降であるといわれています。そのため、日本の伝統的な文書には句読点が使われていません。

これが、挨拶状に句読点を使わない一つ目の理由です。

相手を子ども扱いすると捉えられる可能性があるから

句読点が使われ始めたころ、句読点は子供が文章を読みやすくするために付けられていたといわれています。そのため、挨拶状で句読点を付けることで、相手を子ども扱いしていると捉えられてしまうリスクがあるのです。

「縁を切る」を連想させてしまうから

句読点は、文章を読みやすく区切る役割を果たします。ここから転じて、挨拶状の中で句読点を使うことが「縁を切る」を連想させるといわれています。

挨拶状に句読点をつけることは誤り?

挨拶状に句読点を付けることは、絶対的な誤りなのでしょうか?

実は、近年では読みやすさを重視して、挨拶状であっても入れる場合が増えています。特に、横書きかつパソコン打ちの文章では、句読点を付けることもさほど珍しくなくなってきているといえるでしょう。マナーとは相手への配慮であり、正しいマナーは時代に合わせて年々変化していくためです。

しかし、目上の人へ挨拶状を送る場合や、社長交代など改まった内容の挨拶状を送る場合には、原則どおり句読点は付けない方がベターでしょう。句読点を付けた挨拶状を送ることで、配慮や敬意がないと捉えられてしまうリスクがあるからです。

また、文章を縦書きする場合に句読点を入れた挨拶状は、ほとんど見かけません。

挨拶状の文面における句読点以外の注意点

挨拶状の文面を作成する際には、句読点以外にもさまざまなマナーが存在します。句読点以外に注意すべき主なポイントは次のとおりです。

注意点

・段落落としは使用しない
・頭語と結語を入れる
・時候の挨拶を入れる
・「私こと」や「私儀」は小さく
・忌み言葉に注意する

段落落としは使用しない

「段落落とし」とは、文書の書き始めを1文字分下げることです。パソコンでは、「インデント」と表現されます。

挨拶状においては、この段落落としは行いません。これは、日本古来の文書では段落落としがされていなかったためであるとされています。

挨拶状で段落落としをしたからといって、さほど失礼にあたるわけではありません。しかし、普段から挨拶状に慣れ親しんでいる方にとっては不自然であり、挨拶状のマナーを知らないと捉えられてしまうリスクがあります。

頭語と結語を入れる

挨拶状をいきなり本題から書き始めることは適切ではありません。始めに頭語を書き、その後に時候の挨拶をはさんでから本題に入ることが通例です。

頭語とは、手紙のはじめに書く挨拶を指します。一方、本文の最後は結語で締めます。

使うことのできる結語は頭語によって異なりますので、セットで覚えておくと良いでしょう。主な頭語と結語の種類は次のとおりです。

 頭語結語
一般的な挨拶状拝啓
拝呈
啓上
敬具
敬白
拝具
改まった挨拶状謹啓
恭啓
粛啓
謹白
謹呈
敬具
謹言
謹白
頓首
敬白
返信の場合拝復
復啓
謹復
敬具
敬白
拝具
拝答
再信の場合再啓
追啓
再呈
敬具
敬白
拝具
再拝
略式前略
冠省
略啓
草々
早々
不一

通常は、「拝啓」と「敬具」を用いればよほど問題ありません。特に改まった挨拶状では、「謹啓」と「謹言」などを用いると良いでしょう。

なお、「前略」などは、次で解説をする時候の挨拶を省略していきなり本文に入る際に使用する頭語です。一般的に、挨拶状で時候の挨拶を省略することは好ましくないため、挨拶状で前略など略式の頭語を利用するケースはさほど多くないでしょう。

時候の挨拶を入れる

挨拶状では、頭語の後に時候の挨拶を入れ、その後本題に入ることが通例です。時候の挨拶とは、季節に合わせて相手の状況を気遣う挨拶文のことです。

時候の挨拶は、たとえば、次のような記載となります。

会社宛などの場合

・「秋涼の候、貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます」
・「師走の候、貴社におかれましては益々ご隆盛のことと心よりお慶び申し上げます」など

個人宛の場合

・「盛夏の候 皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます」
・「新春の候 お健やかにお過ごしのこととお喜び申し上げます」など

例文のうち、「秋涼」「盛夏」などの箇所には、挨拶状を送る季節に応じた季語を記載します。また、これらに続けて「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます」などと記載し、その後で「さて、私こと」などと本題につなげることが多いといえます。

「私こと」や「私儀」は小さく

時候の挨拶の後に、「さて、私こと」や「さて、私儀」などと記載してから本題に入ります。この、「さて、私こと」や「さて、私儀」は、他の文字よりも少し小さめに書くことが通例となっています。

また、これらは挨拶状が縦書きの場合には下に寄せて、挨拶状が横書きの場合には右に寄せて記載します。

通常の文章に見慣れていると、用紙の下のほうや右のほうから文章が始まることは不自然に感じるかもしれませんが、挨拶状ではこのようなマナーが定着しています。そのため、これに則って作成した方が良いでしょう。

忌み言葉に注意する

忌み言葉とは、相手にとって良くない出来事を連想させてしまう言葉などです。挨拶状を送る際には、うっかり忌み言葉を使ってしまうことのないように注意しましょう。

何が忌み言葉に該当するのかは、挨拶状を送る場面によって異なります。たとえば、相手の開業や開店をお祝いする挨拶状では、「燃える」や「煙」「赤」など、火事や赤字を連想させる言葉は避けるべきです。余談ですが、開業祝いで送る花でも、同じ理由で赤い花はできるだけ避けるべきだといわれています。

また、お悔やみを述べる挨拶状では、「ますます」や「時々」「いよいよ」など、重ね言葉は使うべきではありません。なぜなら、不幸が重なってしまうことを連想させてしまうためです。

忌み言葉は場面ごとに異なりますので、あらかじめその場面での忌み言葉を確認し、使ってしまうことのないよう注意が必要です。

挨拶状を送る際のその他のポイント

挨拶状を送る際には、文面の記載の他、次の点にも注意が必要です。ポイントを押さえ、マナーに沿った挨拶状を送りましょう。

ポイント

・送る時期に注意する
・誤字脱字に注意する
・「様」や「御中」などの敬称を適切に使い分ける
・挨拶状印刷のサービスを活用する

送る時期に注意する

挨拶状は、送るタイミングが重要です。せっかく挨拶状を送っても、適切な時機を逸してしまっては失礼にあたる可能性もあります。

それぞれの挨拶状における適切なタイミングの目安は、次のとおりです。

送る時期

・独立開業:営業開始日の1〜2週間前
・法人成り:法人化の1〜2週間前
・事務所・会社移転:移転の1か月前
・退職:退職後すぐに
・転勤:可能な限り転勤前に
・社長交代:新社長就任から1週間以内
・周年祭など式典の案内状:開催日10日前まで(返信が必要な場合には開催日1ヶ月前まで)
・転居:転居後1ヶ月以内
・年賀状:1月1日~1月7日
・喪中欠礼:11月上旬~12月上旬
・寒中見舞い:1月8日~節分(2月3日)
・暑中見舞い:7月7日(小暑)~8月7日(立秋)
・残暑見舞い:8月8日~8月31日
・贈り物のお礼状:なるべく早く(3日以内程度)
・葬儀のお知らせを兼ねた死亡通知:葬儀日時の決定後すぐ
・葬儀後の死亡通知:葬儀後できるだけ早く
・お悔やみ状:訃報を聞いたらすぐに

挨拶状を送る準備を計画的に進め、送るべき時期に大きく遅れてしまうことのないよう注意しましょう。

誤字脱字に注意する

挨拶状を送る際には、誤字脱字がないよう注意しましょう。

なお、仮に誤字や脱字があった場合に、修正テープで直すことはマナー違反です。そのため、挨拶状を大量に印刷をしてしまう前に、誤字脱字がないかよく確認されることをおすすめします。

特に、相手の社名や氏名、役職などを間違えたまま挨拶状を送ることは、非常に失礼な行為です。社名や氏名などを誤ることのないよう、送付先リストをよく確認しておきましょう。

また、リストが古く更新ができていない場合には、相手から通知された変更が反映されていない可能性があります。たとえば、相手の会社所在地や役職名などは変更が多い点でもあるため、相手から受けた変更通知がきちんと反映されているか、あらかじめ確認しておいてください。

「様」や「御中」などの敬称を適切に使い分ける

挨拶状の宛名を記載する際には、適切な敬称を付けるように注意しましょう。

宛名に付ける敬称は、原則として「様」「先生」「御中」の3パターンとなります。「行」や「宛」は、自分宛の返信用封筒に記載すべきであり、相手へ付ける敬称としては不適切です。

「様」「先生」「御中」それぞれの使い分けは、次のとおりです。

使い分け

:個人宛に挨拶状を送る際に付ける敬称です。一般個人のご自宅へ送る場合にはもちろん、たとえば「A社の代表取締役であるB」へ送る場合にも「様」を使います。
先生:恩師や、弁護士などの士業へ挨拶状を送る場合に付ける敬称です。この場合には、「様」の代わりに「先生」を使います。「先生様」などとつなげて使うことはありません。
御中:会社全体や部署全体など、団体宛に挨拶状を送る際に使います。

挨拶状印刷のサービスを活用する

先ほど解説したように、挨拶状には句読点を使わないなど独特のマナーが存在します。また、忌み言葉にも注意しなければなりません。

そのため、マナーに沿った文章を一から自分で作り上げることは、日頃から挨拶状に慣れ親しんでいるのでない限り、容易ではないでしょう。

このような際に役に立つのが、挨拶状印刷のサービスです。挨拶状印刷サービスを提供している会社では、挨拶状のテンプレートを提供していることが多いです。そのため、テンプレートをうまく活用することで、場面ごとのマナーに合った挨拶状の作成がしやすくなります。

まとめ

挨拶状には、句読点を使わないことや段落落としを行わないなど、さまざまなマナーが存在します。中には、日頃から挨拶状に慣れ親しんでいなければ、戸惑ってしまうマナーもあることでしょう。

最近では、さほど伝統的なマナーを重視せずに挨拶状を作成するケースも少なくありません。しかし、せっかく挨拶状を送る以上は相手への敬意を示すため、マナーを守ったきちんとした挨拶状を送りたいものです。

マナーに沿ったきちんとした挨拶状を作成する場合には、場面ごとに作成されたテンプレートの活用が効果的です。

当サイト「挨拶状印刷」では、挨拶状を送る目的に合わせたテンプレートを多数取り揃えております。そのため、さほど悩むことなく適切な挨拶状を作ることが可能となります。

挨拶状を送る際には、ぜひ「挨拶状印刷」をご利用ください。